学びは社会が支える時代へ。

2025.11.05

「国際比較に見る日本の親負担主義の重さ」
桜美林大学教育探究科学群特任教授 小林雅之さん

 「すべての人が学べる社会へ 高等教育費負担軽減プロジェクト」は、10月28日に「高等教育費負担軽減Webセミナー」を開催しました。第1回となる今回は、桜美林大学教育探究科学群特任教授・小林雅之さんを講師にお迎えし、「国際比較に見る日本の親負担主義の重さ」をテーマにお話しいただきました。
 小林さんは、世界の各国を見ると、教育費の負担には「公的負担」「親負担」「本人負担」という三つの考え方があり、その背景には異なる「教育観」があると説明されました。例えば、スウェーデンやフィンランドでは「教育は社会が支えるもの」という価値観が根付き、公的負担が中心です。アメリカやオーストラリアでは「教育の利益享受者は本人であり、本人が負担すべき」という考えが主流だといいます。一方、日本や韓国では家族主義的な教育観が根強く、「親負担」が大きいことが特徴であり、こうした考え方は年金や介護などの福祉制度にも共通していると指摘されました。
 また、「本人負担」を採用する国でも、支払いは多くの場合“あと払い”、つまりローン形式である点に留意が必要であるとされました。現在の日本では「授業料後払い制度」は修士課程の一部に限られていますが、今後は拡充が求められると紹介されました。
 さらに、教育費負担の歴史的な推移についても説明がありました。国家成立初期はエリート養成を目的とし公的負担が中心でしたが、工業化とともに高等教育の大衆化が進み、「公私分担」の考え方が強まったといいます。教育需要の拡大により私立大学が増加し、家庭の負担が大きくなったことも紹介されました。近年では、優秀な学生の確保や大学の経営安定を目的に、アメリカなどを中心に「高授業料・高給付奨学金」政策が広がっているといいます。
 高等教育費の負担について、国際比較の観点を中心に日本の親負担主義の重さをわかりやすく解説いただき、大変理解しやすいセミナーとなりました。