「すべての人が学べる社会へ 高等教育費負担軽減プロジェクト」(以下、「プロジェクト」/事務局:中央労福協)は8月28日(金)、文部科学省に対し、有利子貸与型奨学金の金利上昇に伴う返済負担の軽減をはじめとする奨学金制度の改善について要請し、意見交換を行いました。
文部科学省からは、柿澤雄二 学生支援課長、西本経史 学生支援課奨学事業係長、安藝彩織 学生支援課高等教育修学支援室 修学支援係係長が出席し、プロジェクトからは大内裕和氏(奨学金問題対策全国会議共同代表/武蔵大学教授)、岩重佳治氏(奨学金問題対策全国会議共同代表/弁護士)が出席しました。

要請では冒頭、プロジェクトより「貸与型有利子奨学金の金利上昇に伴う返済負担軽減に関する要請書」を手交した後、大内教授から、給付型奨学金の導入や大学等修学支援制度など、これまでの制度改善を評価する一方、急激な金利上昇によって貸与型有利子奨学金の返済負担が増している現状を説明。奨学金の返済利率が借入時には確定せず、卒業時になって初めて決まることなどから、利用者が将来の返済額を見通しにくい問題を指摘し、返済負担を軽減する措置を求めました。
また、岩重弁護士からは、奨学金の返済や学費負担に関する相談現場の実情を踏まえ、金利上昇によって「これから返済がどうなるのか」という不安が利用する側に広がっており、貸与型有利子奨学金の利用を控える動きや制度自体への信頼低下につながっていることが指摘されました。

これに対し文部科学省からは、返還者がライフイベント等に応じて減額返還制度や返還猶予制度をより柔軟に利用できるよう、制度の改善を検討していく考えが示されました。
また、貸与型有利子奨学金の利率については、国会における政府の答弁を踏まえ、現在の「3%上限」の仕組みは維持する方針であることが示されました。実際に市場金利が3%を超えた場合には、上限を維持するための国による新たな利子補給が必要になることから、文部科学省としては、市場環境の変化に伴う経費として必要な財源を確保していく考えが説明されました。
一方、金利上昇を一定幅に抑える新たな仕組みについては、固定金利方式を選択した利用者との公平性や、多額の財源が必要となることなどが課題として示され、当面は減額返還・返還猶予制度の使い勝手を向上させることを基本に対応していく考えが示されました。
また、意見交換では、返還猶予制度の年収基準(現行の年収300万円基準)が現在の物価・賃金水準に見合っていないことや、制度の利用期限、延滞がある場合の利用制限、申請手続きの複雑さなどについても改善を求めました。また、高校や大学における奨学金制度の情報提供を充実させ、返済に困難を抱えた場合に利用できる制度や支援策について、学生に十分な情報が届く仕組みを整える必要性についても意見を交わしました。
さらに、学びたい学生が有利子奨学金の返済への不安を理由に進学を諦めることがないよう、制度の周知を改善する必要性について認識を共有するとともに、中長期的には、有利子から無利子へ、さらには給付型奨学金へと支援を拡充していくことが望ましいとの方向性についても意見交換を行いました。
プロジェクトでは引き続き、奨学金を利用する学生や返還者の実情を踏まえ、誰もが経済的な理由によって学ぶことを諦めることのないよう、奨学金制度の改善と高等教育費の負担軽減に向けた取り組みを進めていきます。
プロジェクトとしての要請は以下の3点です。
(1)利率の据え置きや返済額の軽減・猶予など緊急的な負担軽減措置の速やかな実施
(2)税による利子補給制度の導入
(3)長期的には無利子・給付型奨学金を中心とした制度への移行